世界のことを知る、伝える、体感するために

 以前にも少し書いたかもしれないが、私は今地方都市で自分の場所を持った。一言ではうまく説明出来ないが、古書店であり、カフェであり、アンティーク小物や珈琲豆、マフィンなどを売る店であり、映画劇場であり、イベント・貸しスペースである。大正時代の雰囲気のある建物であり、またある程度の広さがあるので、さまざまな事に活用しようと考えている。とくにやりたかったのは、本の販売と映画上映、イベントである。
 長く戦争を取材してきた人間として、このようなことをやることについては、かなり悩んだ。周囲からは、もう戦場取材を止めた人間と思われているだろう。かつての私を知っている人も少なくなりつつある。それは実は些末な問題だ。一番大きいのは、自身の気持ちの問題だったが、実際問題として、現在では20年前、10年前と比べても、紛争地を取材するフォトグラファーの仕事のあり方も変わってきている上に、メディアのあり方も変わっている。かつてと同じようなことは出来ないし、やっていても仕方がない。かといって、今の若手のフォトグラファーのやっていることにも、私は意識を合わせることができない。しかし、20年以上の私の経験、得た知見というものは絶対的にあり、それは私が自身の内に秘めてあの世へ持って行く、ということでいいとは思えない。そう思っていたこともあったのだが、現在の世界の現状やそれに対する人々の反応、メディアの伝え方を見聞していて、やはり黙していることは正しくないと思う。
 ただ、私の気持ちだけが先走っても、多くの人々はついてこないだろうし、そもそも理解できないだろう。ひとつのやり方として、映画を観て貰うことを思いついた。映画というのは、伝えるということに関しては、ある種非常に優れた特性をもったメディアであり、世界で起きていることを説教臭くなく伝えること、当事者たちの目線でその世界へと這入りやすくするということに関しては、ベストなメディアかもしれないと思う。
 たとえば、先に書いた「ポバティー・インク」という映画を観て貰い、寄付のこと、国連機関やNGOの活動のこと、紛争地や被災地の実情、そういった現場では何が起きているのかということ等々を自分が現場に行ったかのごとく体感することが出来、また関心が深まる。
 その上で、映画を観た後で参加者とディスカッションし、私の見聞や知識を用いて参加者たちの知識欲に応えることが出来るのではないかと考える。
 毎月数回の映画上映を通して、少しでも知る意欲を持ち、また将来何らかの行動を起こしていく人を育てるきっかけを作りたいし、また関心はあるけれど、よくわからないという人たちにも、私が補足的に説明し、より理解を深めることを補佐できたらと思う。
 まだ始めたばかりの活動だが、早くも関心を寄せる人たちが出てき始めていて、悪くない出だしだと感じる。
 拠点をもったのは、長野県松本市。この場所を選んだのは、天変地異に対して一番安全な場所であろうと思えること、全体として文化レベルが高い都市であること。移住者が多く、さまざまな価値観が共存していることなど。
 松本は、首都圏からは近い。余裕で日帰りで旅が出来る地だ。交通の便も良い。遠方の方たちは、旅のついでにも立ち寄って欲しい。戦場で高いモチベーションを持って走り回っていた時とはまた違う、しかしそれ以上の高い意識をもって、自分の経験、知識、考えを次代へと繋いでいきたい。またそうすることが、私が接してきた人々への恩返しでもあるし、立ち会ってきた多くの死への弔いでもあると思っている。

「恋する虜」
これが、拠点の名称だ。フェイスブックなどで検索して、ぜひページをチェックしてほしい。また、実際に訪ねてくれる人は、大歓迎なので遠慮なく来て欲しい。


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Commented by noboru-xx at 2017-11-04 13:41
Facebookで検索して場所確認しました。
私は岐阜(飛騨ではなく美濃ですが)ですのて近いです。
いずれお邪魔したいと思います、
Commented by shmurat at 2017-11-04 19:17
確かに近いですね。ぜひお時間のあるときに、いらしてください。お待ちしています。不定期営業でもありますので、来られるときは、是非ご一報ください。
by shmurat | 2017-11-03 20:17 | 今の世界を考える | Comments(2)