真に帰依した者は   サウディアラビアのサルマン国王来日に寄せて

 サウディアラビアのサルマン国王一行が来日中だ。
日本に来る前から、国王が来る目的よりも、その豪勢な旅の様子が話題になっている。いわく、1000人以上の王子や要人が来るとか、450トンもの荷物を持ってくるとか、高級車が数百台で全て持ってくるとか、まあある意味どうでもいいような事ばかりが報じられている(これなどは、メディアが白痴状態にあることの現れの一端かもしれないが)。
 来日の目的は、石油枯渇を見据えて、新しい産業や経済を確立していくことに向けた、日本の支援、日本との協業、そしてもちろん支援を模索しに来たのであろう。
 そういうことを論じたり、是非を問うつもりでこれを書いているわけではない。

私も、ムスリムの端くれとして、また長くアラブ・イスラーム世界を訪れてさまざまな経験をしてきた人間として書きたいと思ったので、これを書いている。

サルマン国王が、いやサウディアラビアの王族連中が、もし真にムスリムであるのならば、このような富を見せびらかして、散財するかのごとくの外遊など出来るはずがない。アラブ諸国には、その観点からいえば、真のムスリムの指導者はいないともいえるが、サウディアラビアはマッカ(メッカ)の盟主を自認し、イスラームで最重要な聖地の守護者とされている。だとしたら、その立ち居振る舞いや普段の暮らし、政策なども全てにおいて、高度にイスラームの教えを体現していなければならないはずだ。
 イスラームのことを知っている日本人は少ないと思う。イスラームは、決して多くの日本人が考えているような、時代錯誤的で女性差別を助長するような、そして暴力的なメッセージではない。それらは、まさにキリスト教世界がイスラームのイメージを植え付けるために広めたものであり、かつて石油ショックの時代に、「片手にコーラン、片手に剣」というスローガンを広めたことと延長線上にある。
 実際のイスラームは、極めて平和的であり、平等であり、相互扶助の精神が広く実践されていて、真の平和の教えであるといえる。現実がそうなっていない面があるのは否めないが、それらも多くは欧米キリスト教世界のプロパガンダが功を奏していることの結果である。
とはいえ、だからこそ、ムスリムは自身を律して、真の姿を身をもって実践しなければならないのに、残念ながら、政治家や経済界の人間、国家元首やセレブリティーなどの少なからずの人間たちが、自らイスラームを貶めるような行為を行っていることもまた事実である。
 私自身はもちろん聖人君子ではない。過ちも犯してきたし、いわゆる厳格なムスリムでもない。しかし、真のイスラームとは形式に囚われることではない。また、人に見られることを意識して表面だけを装う人間も多いが、一方ではほんとうに立派な人たちを、私はイスラーム世界で多くみている。地位とか財産とかではなく、純粋に人間として優れた人たちである。どういうことかといえば、人間として当たり前のことを自然に実践している人たちである。いつも正直で、困窮者には手を差し伸べ、決して驕らず、つねに控えめで、不正には決して黙さない。そんなムスリムの鏡のような人は、決して少なくない。が、そんな人たちの品行は、世界の多くの人々の目に触れることはない。彼らは、宣伝目的ではなくて、ほんとうに日常で自然に実践しているからだ。
 その観点からいって、今回のサルマン国王たちの行いは、実に恥ずかしいことである。また、今回の事に限らず、伝統的にサウディアラビア王家が富を独占し、驕り高ぶり、イスラームを利用して私利私欲の限りを尽くしてきたことは明らかだ。
 彼らは、一回の外遊に億単位の金を使ったり、高級ホテルに宿泊し、贅沢品を買いあさり、高級レストランで金を浪費するのではなくて、他にやることがあることを思い出して欲しい。
 今現在でも、たとえばシリアやイラクの数百万の人々が苦しんでいる。この混乱には、サウディアラビアも直接間接に責任もあるのだから(その理由はここには書かないが、興味のある人は調べて欲しい)、そういう人たちを助けることは、義務であろう。また、欧州に人々が逃げていて、そこでまた厳しい暮らしを余儀なくされている。そういった人たちを受け入れて、自国民と同じように遇することもやらなければならない。そんなことも出来ていない人間が、どうしてイスラームの盟主たりえようか。

 心あるムスリムたちならば、今回のようなムスリムを名乗る者の愚かな行動に心を痛めていると思う。怒りさえ覚えている人も少なくないだろう。
 これらの政治指導者の堕落に対して憤りを憶える人たちが、この数年のアラブ世界の混乱に乗じて台頭している面もあるが、いずれにしても、アラブ・イスラーム世界のほんとうの混乱、改革は、まだまだこれからだろう。
 またメディアの報道で、サルマン国王らの日本での姿を見る人たちには、あの人たちはサウディアラビアの指導者であり、特権階級の人たちではあるかもしれないが、少なくともムスリムではない、ということを肝に銘じて欲しい。イスラームやムスリムを、彼らを見てステレオタイプに決めつけないで欲しい。

イスラーム世界に、真の変革が早く訪れることを心より願う。



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by shmurat | 2017-03-13 21:36 | 今の世界を考える | Comments(0)