アーティストの力

異端のバレーダンサーといわれ、世界で最も優雅な野獣とも称される、セルゲイ・ポルーニンの来日記念上映会に行ってきた。
私は彼のことを知らなかったのだが、私のパートナーが教えてくれ、またチケットを取ってくれたのだ。ありがとう!感謝感激である。

東京藝大の奏楽堂という相応しい場で実現した今回の上映会で、
まずはドキュメンタリー映画で彼の非凡さを実感し、また単なるダンサーの枠を超え、人間としての大いなる可能性を秘めたその素顔にも触れることができた。
バレーダンサーでは、天才といわれる踊り手は過去何人も輩出されているが、バレーという形式を超えて舞うセルゲイの中には、
いままでのダンサーたちとは違う何かが確実にある。
ある意味、非常に現代的な踊り手でもあり、また踊ることにより人間世界に変革の萌芽をもたらすことが出来るかもしれない、
そんなことを予感させる人間だと思う。

映画はもちろん素晴らしかったが、上映後に眼前のステージを見ていると、
光の落ちたステージに徐々に光が満ちてきて、そのときそこにいたのは、セルゲイ・ポルーニン その人だった。

ユーチューブで話題になった動画 「Take me to church」そのままに、
まるでビデオ映像から抜け出てきたかのように、彼はそこに存在し、
そして決して広くはないステージを、縦横に舞った。
ダンサーとしても頂点を極め、また舞い手として天賦の才を帯びている人の舞踊は、唖然とするほかない。
魅入られ、息をすることも忘れてしまうほどだった。
どのくらい舞っていたのか、おそらくごく短時間だったと思うが、そんなことさえも記憶にないほどに、圧倒的なパフォーマンスだった。

最後に少しトークの時間があり、彼はアーティストが出来ること、やるべき事を語ってくれた。
今の世界のことに触れ、
戦争やテロや相互不信、悲しみ、怒りが蔓延する社会の中で、
アートの力により、人々を繋ぎ、融合に、一つにしていく。それが出来るのは、アーティストの力によってかもしれない。
アーティストには、それが可能かもしれないし、そのために取り組まなければならない。
そんなことを言っていた。

これは、まさにその通りだと思う。
言っていることは、特段目新しいことではない。
以前から、さまざまな人が発言していることだし、感覚的にそういったことを感じている人は少なくない。
しかし、何が新しいかといえば、彼のような天賦の才に恵まれた人間がそれを感じ、発言し、またそのために動き出していること。
それが素晴らしいし、そこにこの世界への可能性を、まだ微かに感じることができた。

アーティストというのは、それぞれの信じる表現の仕方で、それぞれの出来る表現によって、
社会に波動を起こし、変えていくことの出来る人たちだと思う。
表現者は世界に無数にいるが、そこまで大きな力をもった表現者は、実はそれほどはいない。
彼は、間違いなくそのうちのひとりであり、中心的なひとりだと思う。

これからも彼に注目していきたいし、まだ若い彼が、これからどんな舞をみせてくれるのか、楽しみである。
また、彼がその高らかな舞によって、世界の閉塞状況を高く超えていき、否応なく変えていくことの切っ掛けを作って欲しいと思う。

彼は、政治家になってしまったらおしまいだと思うから、感覚的に踊り続けて欲しい。
彼は、体感的にわかっているはずだから。

私も、彼と可能な限りシンクロしながら、自分の出来ること、やるべきことを続けていきたい。
それがコースを外れていなければ、どこかで彼の波にも乗ることができるはずだから。
そう信じているから。




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by shmurat | 2017-04-28 14:03 | 日々徒然の記 | Comments(0)